縁側と執務室

　　ーーぽかぽかと穏やかな午後の昼下がりーー

　執務室で書類にペンを走らせていたミカエルの耳に、突然有り得ない言葉が飛び込んで来た。

　「博士！縁側を作って下さいにゃー！」

「え…縁側！？」

　あまりの事にペンを握ったままの状態で硬直するミカエル。

　ミカエルの椅子のすぐ後ろ、テラを一望出来る暖かな窓辺に直接、腰を下ろした文字郎が今日の日差しのような穏やかな笑みを浮かべている。


　自分の言葉がミカエルの体温を２℃ほど下げてしまった事など、お構いなしだ。

　ガラスの方を指差し、

「ここに縁側を設置して後、美味しいお茶と～…おかき　か　おせんべい　か　お団子があれば、いいでござんすねぇ～。
あ、ホイップクリームあんぱん　でも大丈夫でござんす！」


「な…何が大丈夫なんだっ！？」


「あっしは博士のSP的な？感じで、お側で警護してるでしょう？執務室に居る時間、けっこう長いもので…」

　「ほぅ？キミは今、SP…と言ったか？」
二ヤリとミカエルの口元に、勝ち誇ったかのような冷笑が浮かぶ。

　「ならばここではなく、執務室の扉の前の、廊下に立って警護してくれたまえ！」
　ビシっと廊下を指さす！


「いいですよ？」
ニコッと微笑む文字郎…。
しかし、その笑顔はどす黒い！
　「貴方の目の届かぬ扉の向こうで、あっしがまた、博士やノエルさんの私室を調べて、貴方の弱みを握ってもよいと　お考えなら…！」

　（ピシッ）固まる空気！


　「………………」
　「………………」

　ただならぬ雰囲気で睨み合う二人。
　昼なのに　ますます下がる気温…！
　なぜか暗くなる照明！！


ヒュウウウ～～～

　空調の関係か吹き抜ける一陣の風…

　先に口を開いたのはミカエルの方だ。根負けしたかのように口元を緩める。

「怖いな…キミは！（２度目）」
　クスッと、今度はどす黒くない笑みを漏らした文字郎。
　「怖くにゃいですにゃー！」
と、おどけて嬉しそうに、しっぽをぱたぱたと振った。


　　　　　　　　－－－数日後ーーー

　執務室の隅っこに小さな縁側が設けられ、そこで満足そうにホイップクリームあんぱんを頬張る文字郎を、
ザクロ＆クズノハは２度見し　あまりの光景に硬直するのであった。