続・必殺の人々

　心地よいサンクルスの昼下がり。

　手製のハンモックで夢うつつ状態のリュークの耳に,突然不快な申し出が飛び込んで来た。


　「おい、リューク！そろそろ　オレ様達コンビも、合体必殺技、作らねーか!?」

　「んン…コン、ビ？」

　目を開けると覗き込むアレックスの顔がどアップで映り込む！
　「ア…アレックス～～!?」

　ドシャガラドサァー！

豪快なリアクションでハンモックから転げ落ちるリューク！
　「な　…何だよアレックス！?本題に入る前に、起こし方ってモンがあんだろ!?」
　リュークの抗議に平然と答えるアレックス。

　「起こしたぜ!?何度も！『キッチェとマリアちゃんが貴様の寝顔に落書きしてるぜ～？』とか、『テイオーが唇、奪おうとしてっぞ～？』…とか！起こしまくり！」
　「ぶっ!?クチビ…奪われてねーだろーな?」
　「ああ！さっきマリアちゃんが、貴様の口ん中に大量のワサビを トッピングしてたから、テイオーなんか顔寄せた瞬間に気絶したぜ？」

　途端に口の中にワサビの刺すような痛みと臭気が広がった！

「うっ！？ぐほ！げほ！み、み、…水！」

　よく見ると、足元には泡を吹き倒れたテイオー！
　アレックスは鼻にシンクロナイズドっぽい鼻栓をしている。

　この様子を遠くで眺めていたマリアは、 「くすっ」と、悪戯っぽく笑い、肩をすくめた。


　「マ…マリア！」
　「だって、キミ、どんなに起こしても起きないんだもん！」

　マリアは以前では決してしなかった、悪質なイタズラを仕掛けて来るようになった。以前を天使に例えるなら現在は、軽く悪魔化している。
　「………」

　言葉に詰まるリュークの肩をポンと叩き、アレックスがすかさずフォローを入れる！
　「まあま、リューク！こういう問題は時間(とき)が解決するもんだ！」
　軽い調子で言うとマリアを輪の中に招き入れる。

　「マリアちゃん！俺様達コンビは、合体必殺技を開発中なんだが、何か良いアイデアない？」
　「をいっ!?アレックス、何、勝手に…」
　「合体必殺技…!?それ、ミノル君とカナメさんにもあったなぁ！」

　マリアが声を弾ませる！
　「!!」
　驚くリューク＆アレックス！


「必殺スイ－ト・フォロースマイル！」
　「ス…スイ…!?何それ？」
　やけに、ふわふわしたネーミングにリュークが思わず、尋ねる。

　「まず、カナメさんが何かと、『やんちゃ』しちゃうの。その度にミノル君が『うちのカナメがすみません！』って笑顔で謝ってまわるの！皆、ミノル君に免じて許してくれる。それが必殺スイ－ト・フォロースマイル！」




　「た…ただの尻拭い～～！？」
　「ご…ご先祖様～～！？」
　カナメの悪行にガックリと肩を落としたアレックスが尋ねる。


　「マ…マリアちゃん、他にないの?必殺技…」
　「ラ・ミノル＆カナメ　スペシャルとか？」
　2人同時に


　「ラ、って何？ラ、って～～!?」

　マリアは懐かしそうに話す。

　「お料理。」
　「お…。………」
　リューク＆アレックス絶句！　

　「ミノル君はね、手先が器用で絵もピアノも、スゴく上手いの！
もちろん、お料理も得意で、子ども達にも評判なんだけど、1ヶ月に1回くらいカナメさんも手伝うの。」

　「…手伝う？」

　「カナメさんが珍しい食材を調達して、ミノル君と2人で作る！
ミノル君の繊細なレシピに、カナメさんの普通じゃ思い付かない豪快なアイデアが加わって、最高の1品が完成！」

　マリアは目の前のリュークとアレックスを期待の眼差しで見つめる。

　「美味しかったなぁ～『キノコの国のビーフストロガノフ』に、『天使の衣のシフォンケーキ』。」

　「…………」
　「…………」

　「マ…マリア？それ、刺客とか来ない世界の話だな…。」
　声を絞り出すリュークに、頷き同意するアレックス。

　「そそ。俺様達はもっと強ぇ技を…」


　　ガサガサー!!

　「素敵ー!!キッチェも食べてみたいなぁ！天使の衣のシフォンケーキ！」

　「キ…キッチェ～!?」　

　こっそり聞き耳を立てていたキッチェがさらに、期待の眼差しを送る。
　「キッチェ…ヌードルマン的な必殺技もアリだと思う！」

　「い…いやいや！待てって！」

　－－刺客との対決を一応イメトレするリューク＆アレックス！－－


もわもわ～ん

　「ワターシハ、テラ　カラノ刺客エル・ニーニョ！」
　「そしてラニ－ニャ！」　(注・あくまでイメトレです。)

　「待て！お前達の好きにはさせないゾ！」
　バーン！
　フライパンを手に持ったリューク登場！

　「行くぜ!?リューク！」

シャキーン！
　新鮮・海の幸を持参したアレックス！

　2人、声を合わせて決めゼリフを叫ぶ！

　「この世の悪を料理してやるぜ！！食らえ！ラ・リューク＆アレックス　スペシャル～～!!」

　エル・ニーニョ＆ラニ－ニャ


　「ラ、って何？ラ、って～～!?」

　カチャカチャカチャ…　「……」
　「塩。」　「バター」
　「ラーメン」

　－－調理中。しばらくお待ち下さい。－－



　「ウ…美味イ？」
　「オウ!?心ガ洗ワレルヨウデース！ワターシ達ガ間違ッテマーシタ！」
　「ゴチニナリマーシタ～!!」

　勝ち誇ったように叫ぶリューク＆アレックス。
　「人生はスパイスだ～!」(意味不明)


もわもわ～ん

　「………」
　「………」

　「ないな。」
　「ああ、ねーな。」

　キラーン！
　「ええ!?美味しいお料理は～!?」
　マリア＆キッチェの期待の眼差しを直視出来ないリューク＆アレックスは…


　ダダァ！

　「ちょっと！リューク君！？」
　「ア…アレックス！？どこ行くの～～!?」

　「修行だ修行～～!!」
　2人して、その場から避難するのであった！

　ラ・マリア＆キッチェスマイル！