ＮＯＡ’ｓハロウィン！！

　明け方のサンクルス。
　朝靄の中、キッチェは1人、ご機嫌で畑を見つめていた。
　これまで、手間と愛情を込めて育てた苗が実り、収穫の時を迎え、ついに目と口を開き、喋り始めたのだ！(何でやねん！)


　「オイラはカボチャのカボちゃん！さぁ！煮るなり焼くなり、好きにするっちゃ！」


　キッチェは、その可愛い(?)姿を見るなり、目を輝かせ首を振って言う！

　「カボちゃんを食べるなんて、とんでもないわ！あなたは、ず～っとキッチェのお友達よ!?島のみんなに紹介するわ！行きましょう!!」


　一方その頃、電車の家には……




「んわあああぁ～～!?」
　リュークの悲鳴が木霊していた！


「なな…何だ！?コレ～～!!」
　リュークは視線を1点に向けたまま、硬直している！
　その視線の先には…カボチャパンツっ!!何故か身に覚えのないカボチャパンツをはいているのだ！

　やがて、電車の前が騒がしくなって来た…。

　「いや～～!!リューちゃん！何なのよ!?コレ!!」テイオーも…
　「ちょっ…コレ、脱げねーよ!」タイのキックボクサーも…
　「ボス！何とかしてぇ～!!」半透明人間も…
　全員、カボチャパンツ！カボチャパンツ!!カボチャパンツっ!!！

　「ふん！テラの仕業か!?」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「うおっ!?ダイダロス？」




　　　　　　　ば～～ん!!

　…ダイダロスに至っては、オムツをはかされた可哀想な老犬のようになってしまっている！





　「ふっふっ…お困りのようだね」
　「っ!!」
　空から白い布を被っただけのショボい仮装をした何者かが、降りて来た！

　電車から飛び出すリューク！
　「出たな!?お前が、カボチャパンツマンかっ!?」

　「キ…キング・ハロウィンだ～～!!」
　「あ゛っ!?ハロウィン？いまいち盛り上がり方が分からねー、あの祭りか？」

　ほじほじ
　「うるさーい！鼻をほじるなっ!!今日中に、そのカボチャパンツを脱がなければ、皆、黄泉の国に連れて行かれるのダゾ！クックックッ…」

　「な…何ー？」
　慌ててパンツを脱ごうとするリューク！

　キング・ハロウィンは余裕の笑みだ。
　「無駄だ！そのカボチャパンツは、もがけばもがくほど食い込むゾっ？そして、ホクホクするっ!!」
　「ホ…ホクホクって!?」(あ…。まさかマリアも？)
　ちょっと期待してマリアを振り返るが……

　キラーン！

　何故かマリアは、カボチャパンツ被害に遭っていない！
　「…そのカボチャパンツは男性用だ！」
　「むっ！くそぅ！」
　思わず唇を噛む！
　「リューク！何で悔しがるんですかっ!?」

　「マリアを渡せば……助けてやるゾ？」
　「くっ…」


　キング・ハロウィンがニヤリと笑った…。


　－－テラ・月色の塔－－


　「お任せ下さい博士」
　ザクロからの報告を受けるミカエル・シャークマンの姿が、そこにあった。

　「マリア奪還のため、季節にちなんだ刺客を派遣しました！」
　ぴくっ！
　「ザクロ…。誰がそんな風流な刺客を送れと言った？問題は奪還出来るかどうか…だろう？」
　「は？でもやりますよね？ハロウィンパーティー！」

　しぃん…

　水を打ったように静まり返る執務室。
　「やる気なのか？」

　ゴゴゴゴ…
　　　　　　「あ…いえ、その…ま…まさかぁ～!!」

　博士に正面を向けたまま、ゆっくり後ずさるザクロ。そのザクロの尻尾には浮かれたカボチャのアクセサリーが山程デコレートされていた！
　(やる気だったらしい…。)



　－－サンクルス・電車の家－－

　「あっれぇ～？皆キッチェに内緒でハロウィンパーティーの仮装？ずるーい!!」
　育てたカボちゃんと共に帰宅したキッチェが抗議の声をあげる！

　「んな楽しそうに見えるかー!?し…刺客に襲われてんだよっ！」
　「フッフッ！そうですよ。お嬢さん！このままでは、みんな…黄泉の国…天使も悪魔もカボチャパンツをはいてる世界に連れ去られるのです!!」
　「そ…そんなダサい国、イヤぁ～～!!」
　テイオーをはじめ、島民達からブーイングが起こる！

　「成る程！黄泉の黄の字はカボチャの黄色…と言う事か！」
　「いや！違うだろ？ダイダロス!!」

　　　　　　　　「もっともらしいけど、もっともじゃありませんよ？」

　　　　　　　　揉めている間にも、ホクホクと食い込んでくるカボチャパンツ！
　　　　　　　　「うう…着心地が悪ィ！マリアは渡せねぇし、早く脱がなきゃ…！」

　　　　　　　　と、その時キッチェに育てられたカボちゃんの声が響いた。



　「ねぇ、カボチャパンツって、カボチャっちゃ？パンツっちゃ？」

　ピタリ！

　ふいにカボチャパンツの食い込みが止まった！明らかに動揺している！　(いける！)
　リュークは全島民のカボチャパンツに向かって力説する！

　「おめーらは、パンツなんかじゃねぇ！カボチャだ！だって、…こんなにホクホク…してんだろ？」

　キラーン！


リュークの優しい瞳が、説得力を持って輝き潤んだ。

　カボチャパンツが自我を持ってしゃべり始める。
　「だってボクら…キングハロウィン様に、パンツだって…」

　「違う！パンツの仮装をさせられただけの、カボチャなんだ！！何故って、こんなに…こんなにもっ……!…ホクホクだもの」←（相田みつお風）

　うるうる

　「ええぃ！黙れ！」
　キングハロウィンがイライラと叫ぶ！

　「貴様等は、パンツだ！カボチャだったら食われるだけなのだゾ？」
　「違うよ？」
　キッチェの隣りでカボちゃんが笑った。

　「キッチェは、毎日オイラに水をくれて、お話しをして…それから、ずーっと　お友達だって言ってくれたっちゃ！」
　「オ…オ、ト、モ…ダチ？」

　リューク、キッチェ、マリア、全島民が瞳を潤ませ声を揃えた。
　「そう！お友達!!」

　ドサドサー!!

　一気にカボチャパンツがカボチャと化し、大地に落ちた！

　「ぬ…脱げた？」
　「やったー!!私達、助かったのね～?」
　「うわーい!!」

　歓声に包まれるサンクルス！その様子に
　「ハッピー・ハロウィン…！完敗だ！」

　キングハロウィンは、ゆっくりとサンクルスを去っていった…。





　　　　　　　　　　　　　－－月色の塔・執務室－－

　　　　　　　　　　　　　ミカエル・シャークマンとザクロの前にキングハロウィンが姿を現した。

　　　　　　　　　　　　　「申し訳ありません。博士！失敗致しました！」深々と頭を垂れる。
　　　　　　　　　　　　　「そのお詫び…と言っては何ですが…」
　　　　　　　　　　　　　スッ！
　　　　　　　　　　　　　ミカエルの目の前に何かが、差し出された！

　　　　　　　　　　　　　「博士用のカボチャおパンツです！ホクホクして暖こうございますよ」

　　　　　　　　　　　　　　ぴく
　　　　　　　　　　　　　　　　「ホ…ホクホク？」

　　　　　　　　　　　　　　　　満足げに、部屋を辞するキングハロウィン。

　　　　　　　　　　　　　　　　ゴゴゴゴ…

　　　　　　　　　　　　　　　　「ザクロ？キミは、あんな下品な刺客を派遣したのか？」
　　　　　　　　　　　　　　　　「は…いえ、しかし…問題はマリアを奪還出来るかどうか…なんでしょ？」
　　　　　　　　　　　　　　　　「だから、出来てないじゃないか！奪還っ!!」
　　　　　　　　　　　　　　　　「ひいぃ～～!!す…すみませーん!バッド・ハロウィ～～ン…！」



　ザクロの悲鳴が響く中、クズノハは…

　「うん？そういえば今日はハロウィンか…！イザナギにカボチャのお菓子でも送ってやろうかのぅ？」…と思い…

　－－サイドテラ－－


　「うわーい!見て見て文字郎ぉ～！クズノハから、いっぱい　お菓子が届いたよ～？」


　「フッ！それは良うござんしたね～！」

　　　　　　　　　　　　　　「おお～！子供達、集めてパーティーだなー！」
　　　　　　　　　　　　　　盛り上がるクルセイドの面々！

　こうして、サンクルス・テラ・サイドテラのハロウィンは怒涛の如く暮れて行くのであった。

　ハッピー・ハロウィン！


　お・ま・け
　……一方アトランティス。……


　「おいっ！貴様等！！『船上・ＨＡＬＬＯＷＥＥＮ　ＰＡＲＴＹ開催』の招待状を、みんなに送ったのに何故、誰も来ない！？」

　「か…考えちゃダメであります！！お頭あぁぁ～～～！！」
　「うおおぉぉ～～！！自分は、お頭命令で　2ヵ月前からパーティー準備をしたでありまぁ～～すっ！！」
　「うわあぁ～～ん！」
　各々に滑稽な仮装をした工作員達が逆に悲しい、ワースト・ハロウィンなのでした。